#5朝原 宣治のスプリントラボ

LABラボ

2020年10月04日(日)
am 10:00pm 12:00

  • 会場
    厚別公園競技場
  • 参加対象
    中学3年生・高校3年生 (前回スプリントラボ応募者は、中学生~大学生まで対象)
  • 定員
    70名

多くの大舞台に立ち、ライバル、そして自分自身とも戦ってきた朝原さんが「カッコよく速く」走るため、基本をおさえた指導を実施します!走ることをより楽しむために、シーズン序盤の今だからこそ、技術を固めていきましょう。

このラボは終了しました

矢印ゲストアスリート

朝原 宣治

1972年生まれ。兵庫県神戸市出身。高校から陸上競技を始める。大阪ガス入社後、アトランタオリンピック100M出場日本人では28年ぶりに準決勝進出。100M日本記録を3度更新。オリンピック4大会連続出場、世界選手権6回出場。2008年北京オリンピック4×100Mリレーでは銀メダルを獲得。同年36歳で現役生活を引退。10年には陸上競技クラブ「NOBY T&F CLUB」を設立。次世代の育成や地域貢献活動にも取り組んでいる。

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ATHLETES VOICEインタビュー

ATHELETES VOICE#006 朝原 宣治

前回のラボ開催から自粛期間約8ヶ月を経てついに再開へと至ったスポーツラボ。再開最初は10月4日(日)に行われた『スプリントラボ』。そして先生として迎えたのは、オリンピック4大会連続出場、世界選手権6回の出場歴を持ち、素晴らしい功績を残してきた朝原宣治さん。私たちの生活様式が変化した今、走ること、そしてスポーツの素晴らしさを、朝原さんの指導を通して改めて体感した1日に。

シンプルにかっこよく

中学3年生を中心とした40名が厚別公園競技場に集まったこの日のラボ。「かっこよく速く走る」を目標に、「基本を押さえよう、弾むように走ろう」というテーマを設け、スプリントラボが始まった。

「トップクラスの選手は皆、“シンプルでかっこいい”んですよね。サニブラウン・アブデル・ハキーム選手も桐生祥秀選手も、それぞれのスタイルがあるんですけど基本のところは本当にしっかりしていて、ぶれずに走っている。個性は出るけれど結局はそういうシンプルな人がかっこいい。だから今日も、基本的なことを身につけてもらって、それを意識しながら走ってもらうようにしました」

朝原さん自身も、陸上クラブ「NOBY T&F CLUB」を主宰し、小学生から大人まで指導を行っている中、子どもへの指導についても振り返る。

「子どもは面白くなければやらない。特に陸上は夏場になると、暑い~とか、きつい~って言い始めたりするんで(笑)。だから、楽しませることや言葉をかけるタイミング、いかに子どもたちの知らない間に色んな動きをさせるかなど、プログラムの工夫はすごく大事ですね。今回は中学生以上が対象でしたが、もっと年齢が低いと、言葉で説明してもなかなか理解はできないので、完全に見本を見せて“こんなふうにやってみよう”など、目から入ってくる情報を与えるようにしています」

ちょっとした変化に気づく楽しさ

高校から陸上競技を始めた朝原さん。日々シンプルな練習の繰り返しだったという中で、どのような目標設定を行ってきたのだろうか。

「例えば中学生くらいから、“将来はオリンピック選手になりたい”と言う人もいますが、そういう大きな目標設定は僕には想像できなくて。目の前のタイムがあったらそれよりもちょっと上を目指すとか、ライバルに勝つとか、徐々に登っていったタイプですね。中学の時にハンドボールをやっていた僕が、高校で陸上を始めて、高3のインターハイの走り幅跳びで優勝するなんて夢にも思っていなかった。だから目標設定も全くできなかったんですけど、ある程度実力がついて自分の立ち位置が分かってからは、周りの環境が自分の目標設定になったのだと思います。海外に行ったことも大きかったですね。子どもの時はめちゃくちゃ成長が速い子もいれば、遅咲きの子もいる。陸上は大学でブレイクするっていう子も多いんですよ。だから、中学生の時に目標を立ててもなかなか達成できずに辞めたり、やる気をなくしてしまうのはもったいないなと思いますね。良く言えばシンプル、悪く言えばもう単純な繰り返しの作業が多い陸上競技で、練習後の体の反応が違うとか、動きが意識でこんなに変わったとか、他の人から見てもほとんど変化ないと思うけど(笑)、自分にとってはものすごく大きな変化が分かるようになったらやっぱり楽しいんですよ」

具体的な課題に対しても、自分なりの考え方で向き合ってきた。

「選手時代は、例えば1年間の流れの中で、ピークに合わせてトレーニングサイクルを決めたりっていう計画が明確に細かくできていて、結構ちゃんとやっていたなと思います。実は面倒くさがりな部分があるんですが、それとちゃんと向き合っていましたね。だから嫌な練習も進んでやっていました。メンタルが強いというより、物事を都合よく考えることが上手なんだと思います。試合で一番良いパフォーマンスをするためにはプレッシャーがかかるけど、自分で自分をうまく逃がしてあげるというか、楽になるような考え方をするというのは、うまくやってきたんじゃないかとは思っています」

柔軟な視点で今の自分のベストを探る

ずっと先ではなく、目の前の目標をひとつずつ意識し、達成するためのトレーニングを積み重ねてきた朝原さん。その過程でもたらされる成長について、自身が考える必要な要素を教えてくれた。

「色んな経験を積んでそれが成功するということが成長をもたらすのだと思っています。でもその色んな経験が時に邪魔になったりもする。人間は日々変化しているので、過去の成功体験があるからといって、そのやり方がいつもベストとは限りません。だから、柔軟性を持って、常にその時の自分にとってのベストな選択ができるか、ということが成長するために大事なことなんじゃないかなと。もちろん過去の蓄積があるから今の自分が持っている自信があるんだけど、あまりにもその過去を重く捉えすぎると、新しいことにチャレンジしづらくなってしまいます。僕はうまくいっている時もそこに満足はしていなくて、常にもっと良い方法を模索したり、違うアプローチを行ったりすることが多かったですね。いつも同じ道を通るのが嫌で、毎日違う道を通って帰るとかそういう習性はありますね。好奇心なのかな」

そんな朝原さんの学生時代を振り返ると、色んな道を選ばせてくれた両親への感謝があった。

「僕の両親は、僕の行きたい道に対して意見を何も言わなかった。だから自分で色んなことを選んできたという自信を僕に持たせてくれた、と思っています。中学の時にハンドボールで全国大会に行ったのに、高校では陸上をすると決めて、普通だともったいないはずだと思うんですけど、親は反対せずに“じゃあ頑張って”という感じで。僕を尊重してくれたことがすごくありがたかったし、自分で歩んでいるという実感が持てたんですよね」

人生に張りを与えるスポーツの存在

体、メンタル両方において、強さも弱さも全てがさらけ出されるアスリートの世界。常に自分の現状を把握できるようになったからこそ、次に進むことができた。アスリートになって得られたものを尋ねると「自分のことがよくわかるようになりましたよね」と語る朝原さん。そんな彼にとってスポーツとは?

「スポーツが好きな人にとっては、人生を豊かにしてくれるものですよね。なくても生きていけるけれど、スポーツがあるから元気にもなる。興奮したり、無駄に落ち込んだりもするんですけど、そういうことで生活に張りが出ると思うんです」

最後に子どもたちにメッセージを。

「『自分を信じろ』でしょうか。スポーツって根本的には正解がないので、これで合ってるのかな?って思いながらも、やり続けないと結果が出ないことがほとんど。今世界がこのような状況で、生活とか仕事とか色んなことがガラっと変わっていく中だと、そういう言葉を強く思いながら生きていかないといけないのかなと思っています」

朝原 宣治 Nobuharu Asahara

1972年生まれ。兵庫県神戸市出身。高校から陸上競技を始める。大阪ガス入社後、アトランタオリンピック100M出場日本人では28年ぶりに準決勝進出。100M日本記録を3度更新。オリンピック4大会連続出場、世界選手権6回出場。2008年北京オリンピック4×100Mリレーでは悲願の銀メダルを獲得。同年36歳で現役生活を引退。10年には陸上競技クラブ「NOBY T&F CLUB」を設立。次世代の育成や地域貢献活動にも取り組んでいる。

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