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#4仁井 有介のかけっこラボ
2020年02月11日(火)
pm 1:30~pm 4:30
走ることはすべての競技の基本となります。かけっこラボでは、仁井さんがアスリートとして、そしてコーチとして学んできたその速く走るポイントを大公開!来年の運動会や競技会に向けて、今から一歩先に進みましょう!
ゲストアスリート
仁井 有介
北海道伊達市出身。元ハイテクAC所属100m選手。全日本実業団選手権優勝経験者。厚別アスリートアカデミー選任コーチ。(一社)A-bank北海道レギュラーアスリート。HTB「夢の授業」かけっこ先生。100m自己ベストタイム 10’’34。小学校から陸上をはじめ、日本、世界の舞台で活躍。大学4年時には陸上競技部キャプテンとしてインカレ総合優勝に貢献。ハイテクACでの選手兼コーチを経て、2014年よりスプリントコーチとして活動。自らの経験を活かし、北海道各地の小中学校や少年団、各種スポーツイベント等において講師を務め、子供から指導者、そして他競技のアスリートにもスプリントコーチングを行っている。
→過去の講師はこちらATHELETES VOICE#005 仁井 有介
2020年2月11日(火・祝)に行われた『かけっこラボ』。陸上選手として全日本実業団陸上選手権優勝するなど世界を舞台とした経験を経て、現在プロスプリントコーチとして活躍する仁井有介さんを先生に迎え、200名近くも集まった子どもたちに、楽しみながら速く走るコツを指導。すべての競技の基本となる「走る」ことにおける、大切なポイントを教わった。
足が速くなるその前に
足が速くなるためのコツをテーマに小学生を対象に開催された今回の『かけっこラボ』。陸上専門だけでなく、野球やラグビー、バスケットボールなど他競技を頑張る子どもたちも数多く、これまでで最多となる200名近くの小学生が集まった。
「足が速くなりたいという子が多いですが、実際にはその速くなるためのポイントを掴めない、できない子が多いんです。だから、足が速くなるその前に、“こういう体の動かし方ができたらいい”というコツやポイントを指導させてもらいました。低学年と高学年で分けて実施しましたが、低学年の子たちはこれからですね。経験を積んでいろんなことができてくると思います。高学年の子は思いのほか、理解度が高かったし、教えたことを表現するのが上手でしたね」
これまで子どもから大人まで様々な人を対象に走る指導を行っている仁井さん。今回のように子どもに指導するとき、どういうところに楽しさを感じるのだろうか。
「毎回イメージを持って指導に臨んでいますが、そのイメージを超えてくる瞬間が子どもたちの場合結構あるんですよね。“これ伝わっているかな?”が、“そこまで自分で考えていたんだ”と思える瞬間。教えたことがその子の中でちょっと熟成されたり、科学反応が起きた時なんかは、“ああ、これをやってきてすごくよかったなあ”って思いますね。そのために子どもたちにはわかりやすい言葉を使うことを意識しています。なるべく簡単な言葉、簡単な音で、伝えすぎないこと。『ドン』とか『バン』とか擬音を使ったり、見本を見せてイメージさせたりしています。万人に伝わる言葉ってなかなかないとは思うのですが、どうやったらこの一回でみんなに伝えられるか、毎回トライアンドエラーではありますが、繰り返しながら傾向を掴む努力はしていますね」
全力の競走は、めちゃ楽しい
仁井さんが専門とする陸上。一言で陸上と言っても様々な種目がある中で、短距離の魅力についても語ってくれた。
「つい最近、1ヶ月くらい前に試合に出て改めて気づかされたんですけど、全力の競争はめちゃ楽しいんですよね! 全力を出すからこそ楽しくなるっていうのを改めて感じました。200メートルだとその距離の中で途中ちょっと修正が効く部分もあるんですが、100メートルはやっぱり最初の入りが大切で、そこに合わせていくことが面白いし、それに結果が伴った時はすごく嬉しい」
自己把握をどれだけできるか
子ども時代から陸上を続け、大学生そしてトップアスリートへと進む中での目標設定の方法についてたずねると「あまり目標の立て方がうまくなかった」と自身を評する。
「速く走るというざっくりした目標でOKだったのはやっぱり小・中学生くらいまで。憧れの選手のような動きがしたい、それができればこのくらいのタイムになるだろう、みたいにあまり明確じゃなかった。競技的思考が高くなるとそういった目標だけじゃやっぱりダメで、ちょっと掘り下げて具体的にどのくらい速くなりたいか、そのために何をするべきか、というふうに変化していきました」
性格、身体、メンタル、技術など自分を取り巻く様々な課題についても、現役時代を振り返りながら大切なポイントに触れた。
「陸上選手としての課題は、自己把握をどれだけできるか、ということだったと思います。僕の場合、感覚的なことが優位で、その後に根拠がちょっとついてくる感じでしたね。自分の好きが先にきて、その好きを伸ばすためにどうするかっていう。そのバランスがもっとうまく取れていたら、もっと良かったと過去を振り返ると思うこともありますが、メンタル的には切り替えは早い方でしたね。過去は変わらないんで、ダメだった時、じゃあ次の行動はどうしていこうか、っていうふうに切り替えていました」
成長は積み上げていく意味での変化
過去の失敗にこだわらず、次への行動に移してきた仁井さん。そのポジティブで強い意識は、人の成長過程において、大変さや負荷を感じてしまいがちな時にも強いメッセージとなる。
「成長は積み上げていくという意味での変化だと思うんです。何かを捨てるとか、無くなるではなくて、常に変わっていくんだけど、これまでの過程はちゃんと残っている。そして、必ずしもその成長に対して、大変が付きまとうかといったら、イコールじゃないと思っています。なにかしらの気づきがきっかけで成長することもあったりするから、成長の印象が負荷だけではないんです。負荷を負荷と捉えるか、ハッと思って前のめりになれるようなスパイラルに入れるかどうか。だから、ちょっとした変化にも敏感になればいい。よく子どもたちにも言っているのですが、昨日100回しか跳べなかったのに、今日は101回跳べたらそれだけでいいんです。そういった小さな変化を、自分の中で、成長の肥やしにしてほしいです」
成長課程では、小さないい変化だけではなく、うまくいかないことだってある。仁井さん自身、タイムが伸びない、体が思い通りに動かないなどのうまくいかないとき、どのように乗り越えてきたのだろうか。
「成果が出なくても、自分の中でこうしたらいいと思ったことをやりきっていましたね。ちゃんと変わっていきたい。それでダメだったら手を変えてみる。それでも成果が出なかったらすぐに次に切り替える。その切り替えの線引きは難しいかもしれないけれど、それは運だとも思っています」
アスリートになって得られた、自分を知る力
結果が出た時の喜び、なかなか思うようにいかない時の試行錯誤。短距離という個人種目の中で常に自分と向き合ってきた仁井さん。アスリートになって得られたことは、これまで語ってきたことからもわかるように「自分を知る力」だった。
「アスリートになって得られたことはありすぎて語りつくせないですが、何か一つというと、自分を知る力、ですね。自分を知らないことには、次の一歩が出てこない。そしてその自分がどのくらい変われるかは、今の自分の希望でもあります。今自分はスポーツを中心に活動しています。スポーツって汗をかいて気持ちいいとか、負けて悔しいとか、心の栄養になるし、だからスポーツの持つ力はいろんな分野で普及していると思うんです。ゆくゆくはこれまでスポーツでやってきたことを活かして、スポーツだけじゃなく、もっといろんな場所でいろんな働き方をしたいです。それは子どもたちにも伝えたい。楽しいことはたくさんあるから。陸上も他の種目も、芸術の世界だって楽しいことは世の中にあふれているから、いろんなことに目を向けて経験してほしいですね」
仁井 有介 Yusuke Nii
北海道伊達市出身。元ハイテクAC所属100m選手。全日本実業団選手権優勝経験者。厚別アスリートアカデミー専任コーチ。(一社)A-bank北海道レギュラーアスリート。HTB「夢の授業」かけっこ先生。100m自己ベストタイム 10”34。 小学校から陸上をはじめ、日本、世界の舞台で活躍。大学4年時には陸上競技部キャプテンとしてインカレ総合優勝に貢献。ハイテクACでの選手兼コーチを経て、2014年よりスプリントコーチとして活動。自らの経験を活かし、北海道各地の小中学校や少年団、各種スポーツイベント等において講師を務め、子供から指導者、そして他競技のアスリートにもスプリントコーチングを行っている。第21回アジアマスターズ陸上競技選手権4×100mリレー M35金メダリスト。